パニック速報

The next stage is paradise…

中学生の時、両親が離婚した。

中学生の時、両親が離婚した。
僕は母に引き取られたけど、そのあと母が再婚した奴とはなじめなかった。
だから、僕は離婚後も毎週のように父さんに会いに行っていた。
父さんも僕が会いに来ることを喜んでくれてるみたいだった。
父さんは会う度にお寿司やら焼肉やら連れて行ってくれた。
そして、僕に学校のこと、勉強のこと、そしてたまに母と新しい父のことを聞いてきた。

ある日、「今日は父さんが学生時代から好きな店に行こう」と僕を連れていくと、
その店の前にはすごい行列が並んでいた。

それが二郎との出会いだ。

行列に並んでいる間、父さんは注文の仕方、ロットやバトルのルールなどの基本事項のほか、
慶大生だった橋本龍太郎の頭は実はポマードじゃなくて二郎の脂を使っていたというジロリアン
ジョークも教えてくれた。
それから何度も父さんは二郎に連れて行ってくれた。

ある日、二郎を食べてると父さんがつぶやいた。
「あのな、父さん、再婚しようと思っているんだ。相手には女の子の連れ子がいてね…」

ショックだった。すごくショックだった。
「裏切られた!」とさえ思った。
僕は二郎を食べ終わらない内に店を飛び出し、もう二度と父さんに会わないと決心した。

でも、その頃にはすでに二郎中毒になっていた。自然と二郎に向かうと父さんもいた。
すると父さんが僕をさみしそうに見ながら、普段は食べない大豚W全マシマシを注文した。
あっ!バトルだ!父さんが僕にバトルを申し込んできた!
一瞬戸惑いながらも、バトルに応じた。

それからは二郎に行くとほぼ毎回父さんとバトルした。
会話はなかったけど、いつしか親子から麺友へと関係が変化していった。

それから4年後、父さんが死んだ。死因は通風と肝硬変だった。
そんな重い病気を抱えながら、僕とのバトルをやめなかった父さんに涙した。
そして、ある日、二郎に並んでいると
「父ちゃまの仇! あたちとバトルちろ!」
女の子が僕に突然バトルを申し込んできた。葬式で見た父さんの再婚相手の連れ子だった。
きっと父さんが病気をおしてバトルしたことで死亡が早まったことを知ったのだろう。
父さんは彼女にもいい父親だったんだな。僕も父さんみたいな大きい人になりたいな。

僕は彼女をバトルで叩き潰したが、彼女は何度も挑戦してきた。そして僕は叩き潰した。
父さんを超える男になるために。

8年が経った。
父さんは死亡時に体重112kg。今は僕が108kg。連れ子の女の子はもう中学生で88kg。
知り合いと思われたくないので口はきかないし、
「みゆき」みたく、ある日突然、うちに転がり込んできたらどうしようとさえ思っている。

とりあえず今日も大豚W全マシマシ!