パニック速報

The next stage is paradise…

あて馬と化したがりくそん

幸せとは時間をかけて造り上げていく陶器のようなものなのかもしれない

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がりくそんはいつものようにどの馬券を買おうか悩んでいた。

昨日は彼女の誕生日だった。

昼間は競馬場に足を運んで生で馬たちを眺めた。
夕方は馬面の彼女とデートだ。
夜はお洒落なフランス料理店で馬肉を食べた。
そのまま高田馬場のラブホで馬になって乱れた。

やっと慣れてきた仕事も繁忙期を過ぎ一旦落ち着いた。
がりくそんの人生は順風満帆であった。

ふとそんなことを考えながら今日の馬券を決めた。
最近は日に日に的中率が上がっている気がする。
まだ勝ってもいないのに笑みが溢れる。
幸せな毎日だ。


馬面の彼女は過去に思いを巡らせていた。
元彼と付き合う前から彼の粗暴な態度はあまり好かなかった。
ただ一緒にお酒を飲んでいて話が弾んで・・・

気付いたらホテルにいた。

不思議なものだ。
少し前は特に好意的な感情もなかったのに。
一度抱かれるとなぜか彼に魅力を感じていた。

そんな感情も時の流れとともに薄れていった。
やはり自分のことを大切にしてくれる人が私にとって大事なのだと。

今の彼氏は私のことをよく考えてくれる。
馬面だろうと愛してくれる。
我ながらよくこんな良い人に巡り会えたものだと感じる。
今の彼との関係は良好で仕事にも誠実だ。
ずっと一緒に居たいと思える存在だった。

ただ一点を除いては。


予兆はあった。

ただ、考えないようにしていた。

気のせい、杞憂、考えすぎ、疑いすぎ、誰にでもある、まさか自分の彼女が。

がりくそんは不安だった。
この幸せな日々に罅が入るのが。
一度罅の入った陶器は、元に戻ることはない。
静かに割れるのを待つだけだ。

最初は彼女からの返信が少し遅くなったくらいだった。
しばらくすると、就寝前に送られてきた「おやすみ」がない日もあった。
「仕事が忙しく疲れているんだろうな」というくらいにしか思わなかった。

彼女にしては珍しい少し派手な服を着ていてもイメチェンくらいにしか思わなかった。

そんながりくそんが初めて違和感を覚えたのは彼女との夜の菊花賞でのことだった。
出走前の馬の如く、鼻息を荒くして事に及んだ。
今日もがりくそんの下半身のホウオウサーベルからは馬並の精液が迸る。

レースを終えたがりくそんは馬面の彼女のいつもの馬面を覗く。
なんでそんな暗い顔をするのだろう。
がりくそんは言動よりその表情に表れる変化から感じ取った。
いつもの彼女ではないと。


競馬を愛するがりくそんの下半身は馬並みではなかった。
ただ射精量は馬並みなのは滑稽であった。
射精量は人並みで良いから大きさが馬並みだったらよいのに、と何度願ったことか。

元彼の下半身はそれはもう立派なトウカイテイオーであった。
毎レースともしつこく奥をディープインパクトされ、トゥザヴィクトリーした。
私は元彼とのレースが忘れられなかった。
毎夜、元彼を忘れようとがりくそんとのレースに臨むが、逆効果だった。

がりくそんとくだらない内容で喧嘩をして不貞腐れていたある夜。

元彼から連絡が来た。

なんでこのタイミングなんだろう。
タイミングのせいではなく、自分のせいなのに。
そんな言い訳をしてしまう私は駄目な人間だ。

偶然とは恐ろしいものでそこから会うまで時間はかからなかった。

あるとき発情期の馬の如く夜のレースを求めてしまうときがあった。
がりくそんは出張だった。

躊躇う気持ちはほんの僅かだった。
初めて元彼に連絡をし、ドリームジャーニーした。

元彼と休みが重なったため、そのまま一晩を共に過ごしてしまい、スペシャルウィークとなった。

またこの日は私から連絡したからか、発情期だったからかはわからないが、私の考えを見透かされ、ダノンスマッシュをする前にお預けをされた。

曰く、ジャスタウェイしてほしければ生でヤらせろ、とのことだった。

その日私は初めて生でキングカメハメハされた。


がりくそんは酷く焦燥していた。

ある日、自分の想いが杞憂であってほしいと確かめるために、彼女の携帯電話に手を出した。
LINEを開くと、元彼に夜のレースを誘う彼女からのメッセージが映っていた。
途端に何か気持ち悪いものを触っているような悪寒に襲われ、がりくそんは反射的に携帯電話を窓の外から投げた。
大好きな彼女の馬面も、その日は見ると吐き気がしてしまい、すぐに追い出した。

馬面には「地獄に堕ちろ」と吐き捨てた。

頭の中で何かが割れる音がした。


がりくそんの発狂する顔を見て目が覚めたような思いだった。
よりによって浮気がバレてやっと後悔するなんて。
がりくそんには本当に悪いことをしたという自責の念に押し潰される。
また快楽に負けた自分が情けなくなった。


馬面を追い返したがりくそんは一晩落ち着いて考えた。

感情的になって馬面を責め立てたが、自分にも責任の一端はあるのではないか?

いやしかし、自分が馬に夢中になって首を振っている最中に、馬面は他の馬と腰を振っていたわけだ。

がりくそんの葛藤は続く。

整理できないがりくそんを尻目に携帯を投げ捨てた窓の外は少しずつ明るくなっていった。


翌日、感情がぐしゃぐしゃになったがりくそんの元に馬面が謝りに来た。
謝罪を聞いたあとに、依然として暗い顔をしている馬面に向けてがりくそんはこう言った。

エガオヲミセテ

がりくそんは馬面を許すことにした。
馬面が浮気をしても、馬面とがりくそんの過ごした時間がすべてなくなるわけではない。
泣きながら必死に謝る馬面を見てがりくそんもこれ以上咎めることはできなかった。

2人はまた走り出した。
人生という終わりのないレースを。
競馬は馬と騎手の心を1つにして優勝を目指すように、
自分達も心を1つにして二人三脚で歩もうではないか。

これからの2人の行く末がメイクハッピーとなることを信じて・・・